菱川善夫氏を悼む
12月15日、菱川善夫氏が逝去された。
78歳。胃癌だったと新聞は伝えた。
なんということだ。壮絶な死であった。
前衛短歌は根こそぎ終ったと思った。
今年6月の神變忌シンポジウムでお会いしたのが、私には最後となった。
菱川さんは会場発言として、強い調子で、われわれを叱咤した。
春の夜の夢ばかりなる枕頭にあっあかねさす召集令状 塚本邦雄
この歌はこう読むんだと菱川さんは、微笑んだ。
「あっ! あかねさす召集令状」
この「あっ!」は、絶叫であり、それでいて、現代短歌の未来への希望ともいえる、晴朗な声であった。
はっきり耳に残っている。
現代短歌はすでに前衛短歌をもって終わっているのである。批評家の任務が未来の目を先取して現代を批判するところにあるとはいえ、ともに死するに足る作家と作品を持たぬところに、未来の目の豊かであろうはずもありえまい
菱川善夫「実感的前衛短歌論」
これだけ作家と斬り結んだ批評家は絶後である。
われわれが本当に欲しいのは、解釈や技術批評ではない。
この苦闘続きの現代短歌を先導する勇気が欲しいのである。
激しい否定と断絶を求める精神にしか、現代短歌は成りたたないのである。
菱川善夫「現代短歌と近代短歌」
あなたの言う意味での、現代短歌は、死滅寸前である。
菱川さん!
ご冥福をお祈りいたします。
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コメント
「菱川善夫著作集ブログ」管理人の田中です。
早々に追悼文をお書きくださったこと、知人からうかがい、たいへん遅くなりましたが、感謝申し上げます…
「苦闘続きの現代短歌を顫動する勇気が欲しい」、
このことばにうたれます。
上記ブログの方でも、ご紹介させていただきたく、
よろしくお願いいたします。
酷寒の地より、田中 綾
投稿 菱川善夫著作集ブログ | 2007年12月24日 (月) 07時42分